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PSO2-the Beautiful World-

Ep1:蟲の話

 ←PSO2-the Beautiful World- 注意書き 
白い世界でした。
左も右も白一色です。
辛うじて自分の足元が見える程度の視界しかありません。
「見える?」
声が聞きました。若い、男の子のような声です。
「いや、足元ぐらいが限界だよ。エルメスは?」
別の声が答えました。少し高い、少年のような声でした。
「こっちも同じようなものー。雲が流れるまで少し待った方がいいよ。キノ」
エルメスと呼ばれた最初の声が答えます。
「参ったな。どれくらいかかるか分かるかい?」
キノと呼ばれた別の声が聞きました。
「多分もう少しかな。少しずつだけど流れてるよ」
「わかった」

しばらく待って、ゆっくりと風が雲を押し流していきます。
視界が少しずつ広がって行きました。
「さて、行こうか」
キノと呼ばれた精悍な顔を持つ若い人間が言い、動きが止まりました。
「エルメス」
「なに?」
後輪の両脇に黒い箱を二つ、その上に大きな鞄や寝袋などが乗った荷物が満載のモトラド(注:二輪車。空を飛ばないものを指す)が答えました。
「ボク達が来た轍がない」
キノの言うように、エルメスのタイヤ跡は三歩ほど進んだところで途切れていました。
「どういうことだ…」
キノが来たはずの道を見つめて呟きました。
そんなキノにエルメスが提案をします。
「とりあえずここを降りてみようよ。山だと人もいないだろうし」
「…。わかった」
「視界は開けたけど、この辺りは砂利が多いみたいだから気をつけてね」
キノは了承して、小柄な身長にしては裾の長い土色のコートの前を留めて、余った裾を腿に巻きました。
飛行帽に似た帽子を黒いぼさぼさ髪の頭に被り、エルメスにまたがって首にかけていたゴーグルを装着しました。
「忘れ物はない?」
エルメスが聞いて、
「うん。大丈夫だ」
キノが答えます。
周囲にけたたましいエンジン音が響き、キノ達は走り出しました。

標高も下がり、灰色の大地に少しずつ緑色の塊が増えてきた頃。
「エルメス」
「なに?」
「この道、どう思う?」
「おかしいね」
「やっぱり?」
「うん。人の手が全くかかってない。多分草食動物が群れで動いたりして自然に出来た道だよ」
「困ったな…」
以前立ち寄った国からの道を走っているはずですので、本来ならば近隣の国への交流の跡があるはずです。
「キノ。どうするの?」
「とりあえず川が見つかるまで走ってみよう。それを下って行けばどこかの国に当たるはずだ」
「りょーかい。安全運転でねー」
キノとエルメスはゆっくりと下り坂の先に見える森へ走っていきました。

「川だ」
「川だね」
キノとエルメスの前に、小さいながらも水がしっかり流れています。
「綺麗な場所だったんだろうね」
「そうだねー」
その水は赤く、川岸には人間の死体がいくつも転がっています。赤色はそこから生まれていました。
死体のどれもが体の一部が欠損する程のひどい状態でした。また、川辺に生えている草や木や岩も焦げたり欠けたりていました。
「戦争かな?」
エンジンがかかったままのエルメスが聞きます。
「どうだろう…」
まだ焼けた臭いが新しい木々を抜けて下流へエルメスを進めます。
「キノ!」
エルメスが叫び、キノが後輪を滑らせながら止めました。
「何?」
「正面左方向、何かいる」
「何かって?」
キノが素早くエルメスから降りて、右腿のハンド・パースエイダー(注:パースエイダーは銃器。この場合は拳銃)を抜きます。
口径の大きな八角形の長いバレルを持つリボルバータイプのパースエイダーです。これをキノは"カノン"と呼んでいます。
「分からない。強いて言うならでっかい虫」
「虫?」
キノが正面の草むらに狙いをつけていると、エルメスを一回り程小さくしたくらいの黒い虫が這い出てきました。
「エルメス。あの虫が咥えてるものって」
「手だね。多分さっきの人達の誰かさん」
虫がキノに気づき、鎌のような前足を上げて布を裂くような咆哮を上げました。
顎から開放された腕が地面に落ちるのと、キノが虫の頭を吹き飛ばすのが同時でした。
仰向けに倒れた虫に、注意深くキノが近づきます。
時折思い出したようにビクビクと動いていますが、起き上がる様子はないようです。
「なんなんだろう、この虫は」
「見たこと無いねー。この地域に生息してるのかな」
「人を食べる虫か…」
「世界は広いねー」
そんな会話をしている中、少し先の開けた場所に大型の機械がゆっくりと降下してきました。
「あれは新型のホヴィー(注:浮遊車両、ホバー・ヴィークルの略称)かな?エルメス」
「ホヴィーというよりはどこかの国で見た"ヒコウキ"ってやつに近いんじゃないかな。羽もあるし」

降下してきた機械から数人の人間が降りてきました。
「話が通じればいいけど」
キノは右腿のホルスターにカノンを仕舞い、エルメスをそちらへ押しました。
「おぉ、無事か!」
「よかった!」
「大丈夫か!?怪我はないか!?」
降りてきた人間に次々と心配していた旨の言葉を言われ、
「よかったね。通じそうじゃん」
エルメスが小声で呟きました。
「こんにちは。ボクはキノ。こちらは相棒のエルメス」
「どうもねー」
キノとエルメスが降りてきた人間達へ挨拶して、彼らも自己紹介の後、自分達は"アークス"の同胞を救出しに来たと説明しました。
「アークス?」
キノが首を傾げ、
「近くの国の自警団か何か?」
エルメスが質問を引き継ぎます。
それを聞いたアークスの何人かは一瞬目を丸くしてしまいました。
「ここは危険だ。ひとまず船に乗ってくれ」
とキノ達に他のアークスが促します。
「危険って、あの虫みたいなヤツのこと?」
エルメスがズバリ言い、
「ああ、その通りだ」
バーキンと名乗った中老の男が答えました。
「わかりました。同行します」
キノは船に乗ることを了承して、エルメスと共に船の中へ入りました。

何度か離着陸を繰り返し、船内が救助された人間や人型の機械達で満員になりました。
最後に帰還する旨を伝えるアナウンスが機内に響きます。
「さて、何から聞く?キノ」
キノが座る座席の隣に固定されたエルメスが聞きました。
「助けていただいてありがとうございます。もしよろしければ先ほどの虫について教えていただけますか?」
向かい側の椅子に座るバーキンへ質問しました。
「あぁ、いいとも。あの虫…我々は"ダーカー"と呼んでいる存在だ。どこからともなく現れて、その惑星に住む者達に寄生し侵食する危険な存在だ」
キノが相槌を打っていると、
「おっちゃん、ちょっとごめん。キノ、外を見てみるといいよ」
エルメスが話を遮ってキノに言いました。
「うわっ」
キノが覗き込んだ窓から見たものは、漆黒の背景に浮かぶ緑が映える美しい球体でした。
球体は段々と小さくなっていきます。
「…あそこにボクらがいたの?エルメス」
「そうだよー。植物も多いし、ここから見る感じだと生物が多そうだねー」
「へぇ…。すごいな…」
感嘆の息を漏らし、バーキンに向き直ります。
「キノさんはもしかするとあの惑星・・・"ナベリウス"に住んでいたのかい?」
「えぇ、多分。ただ、特定の場所に住まずにボク達は旅をしています。あと、少し不思議なこともありました」
標高の高い山岳地帯を旅していたこと、そこで雲に覆われて何も見えなくなったこと、自分達が走ってきた轍がなくなっていたこと、川を下っていくとダーカーに遭遇したことを説明しました。
「なるほど…。霧に包まれてから我々以外に誰か人とか…知識を持った生物は見なかったかい?」
「いいえ」「だれもー」
キノとエルメスが同時に答えました。
「そうか。…ありがとう」
バーキンが礼を言い、隣にいた若い女性が引き継ぎます。
救助時の自己紹介でアグレルと名乗った女性でした。
「キノさん達はこれからどうするの?アークスではない以上、危険地域に指定されたナベリウスに降りることはできないし…。もし良ければ私達のシップに来ない?」
「シップ?」
キノが再び首を傾げ、
「多分国の事じゃないかな?」
エルメスが補足しました。なるほど、とキノが頷いてアグレルへ答えます。
「是非お願いします」
「まぁ行くアテもないしねー」

その夜。乗船手続きとメディカルチェックを終えたキノとエルメスが案内された部屋は、ナベリウスでアークスシップへ誘ってくれたアグレルの部屋でした。
「じゃあこの部屋を自由に使ってくれていいから」
「ありがとうございます」「どうもー」
アグレルがキノ達の部屋から退出し、キノは自分のコートを初めとする荷物を降ろしました。
黒いジャケット姿になったキノは、腰を太いベルトで留めていました。ベルトには緑色のポーチがいくつもついていました。
そのベルトを外し、カノンや腰の後ろにあるもう一丁の自動式ハンド・パースエイダーをホルスターごとテーブルの上に置き、ジャケットはエルメスのハンドルに掛けました。
そしていつも通りに水場を借りてシャツや肌着を洗濯し、手際良く部屋に干します。
「エルメス。ボク達は夢でもみているのかな?」
「それはないねー。二人して同じ夢を見ることなんて催眠術かなにかでもない限り無理だよー」
「じゃあここはどこなんだろう?」
「うーん。これは推測なんだけど、キノがいた世界とは別な気がするんだ」
「世界が別?」
「うん。彼らの装備にしても、あの輸送機にしても科学レベルが違いすぎるんだよ。キノも見たでしょ?あんな小さい機体で軽々と垂直離着陸するし、あっという間に大気圏は突破するし…」
「タイキケン?」
「そもそもあの輸送機の動力がよくわからないんだ。モトラドなら燃料で動くけど、あれは何かを燃やしている感じではないし…」
「ちょっとエルメスが何を言っているかわからないんだけど…」
「平たく言うとキノがいた所と、こちらのアークスさん達がいる船。両者の間には一発撃つ度に弾丸と火薬を銃口から入れ直して装填するパースエイダーと全自動で弾丸が無くなるまで連射できるパースエイダーくらい違いがあるってこと」
「…余計に分かりにくくなっていないかい?エルメス」
「キノにはわかりやすいかなって思ったんだけど」
エルメスは少し黙り、続けます。
「これからどうするの?いつもの"一つの国に三日間"はできないんじゃない?」
「そうだなぁ…とりあえず」
少ない洗濯物を干し終わって、キノがホルスターを装着し、ジャケットを羽織ってベルトを留めました。
「とりあえず?」
「ご飯を食べてくる。それだけ科学が発達している国の料理がどうなのか気になる」
「いってらっしゃーい。一応閉鎖空間なんだから食料の供給量を上回らないでね」
「努力してみるよ」
力の抜ける会話を切り上げてキノは部屋を出ました。

キノがアグレルに食事を案内してもらっている頃。
「暇だなー」
エルメスは部屋を見渡していました。
一人で住むには十分に広い間取りです。壁際にベッドが一つ、中央には大きな絨毯の上にゆったりとした大きさのソファと背の低いテーブル、観葉植物が並んでいます。
ソファの向かい側の壁に棚が備え付けられていて、その中には小さい花や氷に覆われた花など不思議な花がありました。
「んーと。"照明""全部消す"」
エルメスがそう言うと部屋の照明が全て消えました。
「やっぱりか」
何かに納得し、明かりを点け直して更に続けます。
「"テレビ""点ける"」
部屋に変化はありません。
「じゃあ…"モニター""点ける"」
やっぱり変化はありません。
「あれ?無いのかな?」
もう一度周囲を見渡して、部屋の隅に立つ看板のようなものを見つけました。
「ははぁ。"ビジフォン""点ける"」
エルメスがそう言うと、ヘッドライトの前に画面が浮かびました。
「大当たりー。さーて、色々調べてみようかなー」
キノが帰ってくるまで色々な言葉を唱えるエルメスがいました。

キノが食事から戻り、エルメスと分かった事を交換します。
「惑星間航行船団?」
白いシャツ姿のキノがエルメスに聞きなおします。
「うん。アークスっていう惑星調査組織の親玉で、"オラクル"って言うんだって」
「へぇ…」
「で、今いるこの"アークスシップ"がアークス達の拠点になっているみたいよ」
「アークスは何をするの?」
「簡単に言うと惑星に降りて、現地の安全調査。知識を持った生命体がいれば交流して、貿易が可能かどうかとかいろいろ調べるみたいよ」
「なるほど、それで今回のナベリウスでダーカーと遭遇した。と」
「そういうことー。他にもアムドゥスキアとかリリーパなんて惑星も調査中みたいだよ」
「どんな惑星かわかる?」
「んーとね。アムドゥスキアって星は地表の大半が火山地帯みたいだね。竜族っていう知識生命体が住んでるみたいだよ。そんでリリーパって星は地表が砂漠で覆われているみたい。この星の前文明が残した防衛用の機械がまだ活動しているらしいよー」
「へぇー…。楽しみだな」
「ん?」
キノがエルメスと同じように照明を消して、ベッドへ潜り込みました。
「じゃあボクは寝るよ。お休み、エルメス」
「明日何するつもりなのさ」
エルメスの問いはキノの静かな寝息と共に流れてしまいました。


翌朝、キノはいつも通り夜明けと共に起きました。
この船の中は人工の太陽と月によって擬似的な朝と夜を作り出すようです。
昨晩は暗くてよくわからなかったのですが、大きな窓の向こうには自然豊かな森が広がっていました。
はるか遠くにある大きな樹が、窓の向こうにあるベランダの先まで枝を伸ばしています。
美しい景色を見て一度背伸びをしてから、いつも通り体を動かして温めます。
一通り体が温まれば次は抜き撃ちの練習です。
右腿のカノンと左腰の後ろに自動式ハンド・パースエイダーを定位置に持って行きます。キノはこの自動式を"森の人"と呼んでいます。
森の人はグリップを上にしてほとんどむき出しの状態で固定されていました。
周りにぶつかりそうなものが無いか確認してから楽な姿勢で立ちます。
ホルスターからカノンを抜き、ハンマーを上げ、構えます。間違って発砲しないように人差し指はまっすぐ伸ばしたままでした。
この一連の動作を出来るだけ素早く繰り返します。
カノンを定位置に収めてから、先ほどと同じように左腰の森の人を左手でホルスターから抜きます。
森の人は自動式ですので、撃つ時にハンマーを上げる必要はありません。
パースエイダーを抜いて、構えて、また戻して。その動作を出来るだけ早く、何度も繰り返しました。
「よし」
抜き撃ちの訓練が終わり、パースエイダーの整備をしてからシャワーを浴びて戻ってきました。
文字通りエルメスを叩き起こし、部屋主の元へ向かいます。
「おはよう、キノさん、エルメス君。よく眠れた?」
背の低いテーブルに料理を並べているアグレルが言いました。
「おはようございます。お陰様でゆっくり休めました」
「おはよー。キノに叩き起こされたよ」
「いつもの事じゃないか、エルメス」
「そうだけどさー。もうちょっとやさしく起こしてほしいなー」
「あはは。キノさんは朝食まだよね?お口に合うか分からないけど一緒にどうかしら?」
「いただきます」
キノは即答しました。
「びんぼーしょー」
エルメスは小声で呟きました。

食事を終え、アグレルは仕事に向かう為の準備をしていました。
「すみません、準備をしながらで良いので聞いてもらえますか?」
キノが彼女へ切り出し、
「えぇ、どうぞ」
アグレルは言われたとおり準備をしながら発言を促します。
「惑星探査にボクも協力させてもらえませんか?」
ぴたり、と彼女の動きが固まりました。
「…確かキノさんは"迷子"なのよね」
「えぇ。このシップや貴女の装備に使われている技術は見たことがありません」
「なるほど。だったらここに留まるよりも惑星に降りて調査したほうが解決する可能性があるってことね」
キノは肯定しました。
「キノの装備はそっちからしたら旧式だろうけど腕は確かだよー。何なら試験でもする?」
エルメスが提案します。
アグレルは腕を組み、しばらく沈黙しました。
「…。私だけの判断じゃ何とも言えないわ。とりあえず職場までついてきてもらえるかしら?」
「わかりました」
「おっけー」

長方形の部屋にバーキンを初めとする昨日のナベリウスで会った人間達がいました。
入り口の脇にエルメスがセンタースタンドで立ち、その隣にキノとアグレルが続きます。
「ふむ…。話は分かった」
バーキンが口を開き、続けます。
「実力があれば問題はない…が、フォトンを扱えないとなると厳しいな」
周りの皆が無言でうなずきます。
「フォトン…ですか? どんなものでしょう?」
キノがバーキンに聞きました。
「簡単に言うと我々アークスの持つ力の源だ。生物や大気中に含まれているモノでなぁ…」
どう説明したものか、とバーキンが語尾を濁していると、その発言をアグレルが引き継ぎました。
「私達はフォトンを身に纏って接近戦をしたり、弾丸に込めて撃ち出したり、周囲のフォトンを利用してテクニックを使う事もできるわ」
「テクニック…?」
キノは聞いた事の無い単語に首を傾げました。
「『テクニック…周囲のフォトンを利用することで"マジック"を再現した科学技術。なお、マジックとは"エスパー"と呼ばれる超能力者が扱う事のできる魔法の事でフォトンの影響を受けずに様々な超常現象を起こす。ただし、エスパーは科学技術の発展と共に姿を消し、現在確認されているのはオラクル内でも一桁程度である』だってさ。キノ」
エルメスが突然長文を読み上げ、全員が目を丸くしました。
「おっちゃん、コレで合ってる?」
そして確認のためにバーキンへ問いました。
「あ、あぁ…。その通りだ。どうしてそれを?」
「昨日暇だったから色々調べてみた。ロックも何もなかったから公開していい情報なんだよね?」
「…なるほど。大したものだよ」
感心した様子でバーキンがキノに向き直ります。
「さて、キノさん。残念だがこのフォトンを扱う能力がなければダーカーに対抗することはできない。フォトンなしでは奴らを倒す事はできないんだ」
「えっと…」
キノが言葉に悩んでいると、
「それなら大丈夫、昨日倒したじゃん」
エルメスがハッキリ言いました。
「なんと…。本当か?」
バーキンが尋ねました。
「はい、昨日救助して頂く前に一体。普通にカノンで撃っただけなんですけど」
キノは右腰のパースエイダーを指差して答えます。
「ふむ…。力があるなら断る必要はないが…。一応試験も兼ねてアグレルとデイルに同行してもらおう」
バーキンはキノの隣に居るアグレルとほぼ反対側に位置するサングラスを掛けた男を指しました。
「では本日の班分けを変更する。皆集まってくれ」
発言に続けて彼がテーブルに一体化しているコンソールを操作すると、映像がテーブルの周りに浮かびました。
「キノさんもいる事だから作戦を再確認しよう」
部屋に居た一人、耳の尖った少女がキノに席を譲ります。
「ありがとうございます」
キノは礼を言い、説明を続ける男の向かいに座りました。
「簡単に言うと昨日の続きだ。地表に降りて班ごとにダーカーの処理、並びにアークスの救助をする。班分けは見ての通りだ」
「おっちゃーん。モトラドはー?」
エルメスが不満そうな声を出し、バーキンに聞きました。
「エルメス君はキャンプシップに乗って上空から探索してくれると助かる。機械ってことは遠くまでよく見えるんだろう?」
「まぁ人間よりはねー」
「作戦時間は日没前の現地時間一七〇〇まで。異常があれば通信で随時連絡すること。以上だ」
何か質問はあるかと全員に確認してバーキンは会議を切り上げました。

指定ポイントに着いた輸送機からアグレル、キノ、デイルが降りてきました。
アグレルはグリップの両側に刃がついた特殊な剣を、デイルは二丁の自動連射式パースエイダーを、キノはカノンと森の人をそれぞれ腰にぶら下げていました。
「さーて、それじゃキノさん。よろしくね」
アグレルがキノにウィンクを送り、
「よろしく頼む」
デイルは軽く手を振りました。
「よろしくお願いします」
キノはそれらの返答に胸に手を当てて一礼しました。
「再度確認するけど、ダーカーは見つけ次第処理。原生生物は向かってくる奴だけ対処してね。あとは状況に応じて各自の判断で生き残りましょう。以上ッ!」
アグレルが簡単に説明を終え、二人は頷きました。

付近を探索して、ダーカーがいればアグレルが斬り込み、キノとデイルはその援護をしました。
何度かダーカーや小型の原生生物に遭遇しましたが、救助対象のアークスはいませんでした。
「作戦終了予定時刻まで後二時間ってとこかー」
アグレルが時間を確認しました。
「そろそろ合流ポイントへ向かったほうがいいだろう。先に進もう」
デイルが提案し、二人は承諾しました。
三人が歩みを進めると、澄んだ水を蓄える大きな湖に出ました。水底がはっきり見えるので深さはさほどないようです。
「…あれはなんです?」
キノが湖の先を見て二人に聞きます。
「多分原生生物」
と、アグレル、
「あとはダーカーの残骸だな」
と、デイルがそれぞれ答えました。
建物の三階はあろうかという灰色の毛で覆われた巨体が二足歩行で対岸にいました。
大木のような太さの両腕は胴体より太く、頭の位置には黄色い鉱石のようなものが生えています。
その鉱石には赤黒く、怪しく光を放つコブのようなものが確認できました。
「えーと、"ロックベア"って言うらしいわね。こっちから手を出さなきゃ暴れる事はないくらい温厚な生き物らしいけど…」
アグレルがデータを参照しながら対岸の生物を見てキノに説明します。
足元のダーカーを全て潰し終わったのかロックベアが周囲を見渡し、こちらに気付いたようで両腕を打ち鳴らして威嚇してきました。
「やる気らしいな」
デイルが腰から二丁のパースエイダーを両手で引き抜き、
「うーん。温厚ってなんだろう」
アグレルが両剣を抜き、一体化させます。
「…」
キノはロックベアのコブを見つめ、カノンを軽く叩きました。

ロックベアの動きは見た目よりも俊敏でした。
「おわっと!」
アグレルが右腕の叩きつけを間一髪で避けます。
相当な力が地面に加わり、小さなクレーターが出来上がりました。
「うわーぉ…」
アグレルがその跡を見て呟きました。
振り下ろしたままの右腕をデイルが足場にしてロックベアの真上へ駆け上がります。
そのまま跳び抜けるようにパースエイダーの弾倉を全て撃ち衝けます。
「ちっ」
デイルは手ごたえが無いことに舌打ちして背中側に着地しました。
「ちょっとー!どうなってんのこれ!」
アグレルが文句を言います。
斬っても撃っても相手は痛がる様子もなければ文句も言いたくなるでしょう。
実際にロックベアの全身は斬り傷や弾痕が至る所についています。灰色の毛も、ほとんどが赤く染まっています。
こんな状態なら普通の動物は退避行動を取るなり、防御姿勢をとるなりするはずですが、このロックベアは平然と向かってきます。
「…」
キノは沈黙したまま、空になったカノンのシリンダーを交換し終えました。
「一応、もう一回」
ポツリと呟いて、左手で森の人を抜き、三連射しました。
狙いは頭部のコブ。
ロックベアはその巨体に似合わぬ速度で屈み、弾丸は頭の鉱石に当たりました。
キノはよし、と呟いて、
「おそらく弱点はあのコブです!少しでいいので動きを止められますか!?」
二人に叫びました。
「OK!」「了解した」
アグレルとデイルが同時に返事を返し、二人がロックベアに向かいます。
ロックベアはアグレルの方を向き、人を撲殺するには十分すぎる両腕を振るいました。
彼女はそれをダンスのステップを踏むように紙一重で回避します。
デイルは目標の周囲を旋回しながら両手のパースエイダーをロックベアの脚めがけて撃ち続けます。
硬い皮膚を持つロックベアでも関節部分は比較的弱いようで、弾倉を10本分ほど連射した弾丸が左脚の関節を砕きました。
「任せたぞ」
デイルはアグレルにそう伝え、少し距離をとりました。そして、銃身が焼ききれて使い物にならなくなった相棒を見つめました。
バランスを崩して前のめりに倒れたロックベアにアグレルが突撃します。
「おぅりゃっ!」
気合と共に分解した両剣を目標の両手に突き刺します。
両剣は本来一つにつなげて使う武器なので、当然このような使い方をすると壊れてしまいます。
現に彼女の両剣は異常なほどフォトンが輝き、火花が散っていました。
「キノさん!」
アグレルが叫びました。
キノは既にカノンを構え、狙い終えていました。
ロックベアのコブに三つの大きな穴が開きました。その銃声はほとんど一発にしか聞こえませんでした。

その夜。キノは前日と同じようにアグレルと食事へ出かけ、エルメスは部屋で留守番をしていました。
やっぱり前日と同じように呪文を唱えて調べ物をしていました。
「ねーさーん? はいるよー」
そんな声と同時に中央の部屋に誰か入ってきたようです。声は若く、少女のものでした。
「あれ?いないのかな?」
少女はそう呟いてアグレルの部屋へ行き、こちらの部屋にも顔を出しました。
「誰さん?」
部屋の真ん中にセンタースタンドで止まっているエルメスが少女に問いかけました。
「いや、そっちこそナニモノ?」
少女の背はキノより少し低く、髪はキノと同じく漆黒。長さは肩より少し長いくらいでした。
「モトラドのエルメス。よろしくー」
「あ、どうも…。ティクルです…」
不審なモトラドに挨拶され、思わず少女は返事をしてしまいました。
「いや、そうじゃなくて。なんでこんなところにモトラドが!?ねーさんが買ったの?」
「んー、簡単に説明するから座って座って」
エルメスが話をするために着席を求めます。
「う、うん…」
とすっ。と軽い音がエルメスのシートから聞こえました。
「いや、そっちじゃなくて近くのソファにね。倒れたりしちゃうと危ないし」
「あ、そうね。ごめんなさい」
素直に降りてソファに座り直しました。
「じゃあ説明するね」
エルメスは、運転手であるキノと一緒に旅をしていると何故か惑星ナベリウスに居た事から今日の作戦の事まで伝えました。
「なるほどねー。ねーさんが買ったんじゃないのかー」
ティクルは少し残念そうに呟きました。
「うん。だから無断で乗ったりしないでね」
「はーい」
ティクルは返事と同時に何かをひらめいた様で、エルメスに提案します。
「ね、エルメス」
「なに?」
「もしよかったら旅の話聞かせて欲しいな。いろんな所行ったんでしょ?」
ニコニコしながらエルメスに詰め寄ります。
「いいけど、主に行動したのはキノだから又聞きになっちゃうよ?それでも―」
「それでもいいのー。聞かせて聞かせて!」
エルメスが言い切る前にティクルが被せて発言しました。
「じゃあ…"全部を多数決で決めちゃう国"の話から―」
キノ達が帰ってきたのはティクルがたくさんの話を聞いて、そのままソファで寝てしまった頃でした。
「おつかれさま、エルメス」
「ありがとう、ごめんねエルメス君」
長時間話していたエルメスは二人から労われました。
「こっちも楽しかったからいいけどねー」
アグレルが眠ったままのティクルを抱き上げて自室に運び、キノとエルメスは前日と同じように互いに得た情報を交換しました。
明日の予定を確認して、
「おやすみ、エルメス」
「おやすみ、キノ」
キノは眠りにつきました。
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